Column 院長コラム

花粉症について

SAYA160105202992_TP_V

花粉症とは

花粉症は花粉を吸引することによっておこるアレルギー疾患です。
花粉の粒子は比較的大きいので、吸い込んだ花粉は鼻の粘膜に吸着して反応し、くしゃみの発作や鼻水、鼻づまりをおこします。

眼に入った花粉は痒みや涙目をおこしますし、皮膚に付着すると湿疹をおこします。
重症の患者さんは発熱や下痢をして風邪の症状と区別できないこともあります。

花粉症は他のアレルギー疾患と同様に体質として遺伝します。
家族にアレルギー疾患の患者さんがいるひとは、現在症状がなくても将来花粉症になる可能性があります。
不用意に花粉を吸っていると徐々に体内に花粉症をおこす抗体という物質がつくられ、限界を超えるとある日突然発病します。

この抗体の量を検査することで花粉症の診断ができます。
花粉症が疑わしいひとやアレルギー体質の疑いのあるひとは、一度検査を受けておくと治療や予防に役立ちます。

花粉症はなぜおこるか

花粉症はアレルギー疾患のひとつで、発病には環境と体質が相互に関与しています。
アレルギー体質の強い人は少ない花粉を短期間吸っただけでも花粉症になりますし、アレルギー体質の弱い人でも飛んでくる花粉が増えると何年も吸っているうちにやがて発病します。

花粉症の増加は、最近数十年間の私たちの生活環境の変化と密接な関係があります。
本来花粉はアレルギーの原因となる性質はそれほど強くありません。
ところが戦後に国の政策としてスギをどんどん植林したため日本の森林はスギ林ばかりになってしまいました。
その結果、シーズンになると異常に沢山の花粉が私たちの生活空間に飛来するようになったのです。

また飽食の時代となり高タンパクの食事を摂るようになったことや、医学の進歩による感染症の減少は、皮肉なことに私たちの体質をアレルギーになりやすくしてしまいました。
ディーゼルエンジンの排気ガス粒子も花粉と一緒に吸いこむことで抗体をつくりやすくすることが知られています。

日本人の10~20%がスギ・ヒノキ科花粉症であると言われていますが、これだけ花粉症が蔓延した原因は花粉を含めた私たちを取り巻く環境が急激に変化し、本来花粉症にならなくてすんでいた人までが発病しているためです。
私たちは5分の1の確率で花粉症になる可能性があり、このまま現在の環境を放置すれば発病が早まり大人だけでなく、子供たちに花粉症が増加することが危惧されます。

花粉症をアレルギー体質の人だけの病気として捉えている限り根本的な解決は望めません。
花粉症は私たちを育んでいる地球環境の病気であり、私たちの身体は病んだ自然に対して正直に反応しているだけなのです。

花粉の種類は?

現在、花粉症の原因植物は40数種類が報告されていますが、条件さえそろえばどんな花粉でも花粉症の原因になり得ます。

条件の一つは沢山の花粉を飛ばすことで、花粉症の原因植物のほとんどが風媒花です。
観賞用の植物は虫媒花であることが多く、花粉が少なく、また虫に付着しやすいように花粉が粘着質なので、人工授粉など職業的に花粉を扱うひと以外には花粉症をおこすことはまれです。

日本でこのような条件を満たす植物は、早春のスギ・ヒノキ科植物と初夏のイネ科雑草、秋のブタクサやヨモギです。

治療方法の概略

花粉症の治療の基本は花粉をできるだけ吸わないことです。一度症状が出て重症化してしまうと治療が難しくなります。

花粉症の予防と治療の効果はセルフケアとメディカルケアの適切な組み合わせによって決まります。

つまり花粉情報を上手に活用して、吸い込む花粉の量を少なくすれば、少ない薬で効果的に治療が出来、シーズンを快適に過ごすことが出来るのです。

花粉情報のなかで最も重要な情報はシーズンに飛んでくる花粉の総量です。
スギ花粉には豊作年、不作年があることが知られています。
花粉の総量がわかれば、患者さんにとっては予防や治療の心構えが出来ます。

次に重要なことは花粉シーズン全体の流れをつかむことです。
飛散開始時期は予防や治療を始める目安になりますし、飛散の最盛期には数日の間にシーズン全体の総花粉量の3~6割が飛びますから、この数日だけでも外出を控えて花粉を吸わなければ、花粉症発病の予防にもなりますし、症状の重症化を防止することも出来ます。

もっとも一般的な治療法は、アレルギー反応を抑える作用持った抗ヒスタミン剤(第2世代抗ヒスタミン剤)を花粉シーズンが始まる前から服用し、シーズン中はマスクなどで花粉を極力回避して、症状が出たときは局所ステロイド剤(点鼻薬)や内服のステロイド剤を使う方法です。
現在、第2世代抗ヒスタミン剤は種々の薬効を持った製剤や1日1回の服用で済むものなど沢山の種類から選択できます。
患者さんの体質や感受性の差によって効き目も異なりますから、専門医とよく相談してあなたに合った治療を受けましょう。

問診票ダウンロード